経営者の学習能力

ヨーロッパ視察旅行で、身につけた教養と燃え上がったチャレンジ精神。欧米を1ヵ月間視察した四五歳のころを回顧した大経営者宗一郎の感想である。「戦後まもなくドイツやイタリアに出かけ、そこで事物のすばらしさに魅せられ、その形と輝きと質の虜となり、それらを自分の手で創り出すことが、幼い日からの夢だったことに気づいた。レオナルドーダヴィンチのデッサンを見ていると最近の日本は高度成長の担い手としてしか、技術を考えて来なかったことが反省させられる。
もっと、人間としてのおおらかな発想を大切にした社会に役立つ課題を求めるべきだ。こんなことも実際やってきて人々と話し合って一緒に食事をして初めて気づくことだ。それが、敗戦後数年、あのアプレ(アプレゲール=戦後のはねあがり者という意味)を自認する人物のそのときに抱いた感想なのか。これは、単なる商用レポートではない。人問・社会・芸術・商品にかかわる教養ノートといっていい。この優秀で勉強熱心な経営者はイタリアのほか、イギリス。ドイツの自動車文明を含む社会文化、生産工場の実情を持ち前の感性で鋭敏に感じとった。